ディドロ・ダランベールの「百科全書」
「L'encyclopedie, ou Dictionnaire raisonne des sciences, des arts et des metiers」

 本書は18世紀フランスにおける啓蒙思想の集大成として、ディドロ・ダランベール が企画し、 ほとんどすべての啓蒙思想家が協力して完成した百科事典 である。(副題:科学・芸術・技術に関する合理的な事典)
  日本には、もともと数部しか入って来なかった様であるが、本館には 、大型初版本 ロザーヌ・ベルヌ版 が 所蔵されている。(京都大学にも所蔵有)
 この名著は、創刊(1751)されて以来半世紀にわたり全ヨーロッパ的な ベストセラーとなるが、 フランスでは、この百科事典の出現により、 ショメルの『日用百科事典』(初版・三版・オランダ語版所蔵)の影が薄くなり、 時代遅れとなって忘れられてゆくことになる。
 1751年に第1巻を創刊し、毎年1巻ずつ発行して、1757年に第7巻が発行されるが、思想言論の弾圧や事業に半対するイエズス会からの攻撃も益々激しくなり、 また、協力者ルソーは、思想的不満から「ダランベールへの手紙」を書いて決別し、ダランベール自身も攻撃に対する嫌気から59年に編集から去ることになる。 第8巻以後は、ディドロ とジョクール(1704~1779)の編集によって続刊されるが、表題扉も「某氏編(par M)」となって スイスのヌシャテールにおいて発行して いる。 本巻第8~17巻は1765年に完成し、(図版は1772年完成)以後補巻はマルモンテル(Marmontel, J.F.,1723-1799)の編集によって、 さらに、 同じ出版社から図版続と索引が発行されて、1780年に「百科全書」の 大事業が完成している。 実に、30年に及ぶ膨大なものである。 本書は、初版を発行したのち直ちに第2版が各地で発行されているが 、本館の初版本は、 経過は不明であるが旧制高知高等学校時代に収集したもので、何とか戦災をまぬがれ本館の貴重書として、 また、第2版の ロザーヌ・ベルヌ版 小島文庫 に収蔵されている貴重書のなかの1点である。 (桜木誠之助:元附属図書館専門員)

参照文献
世界名著大事典(平凡社)1960
フランス百科全書の研究/桑原武夫編(岩波)1954

ディドロ・ダランベールの「百科全書」大型初版本

「百科全書」大型初版本
「L'encyclopedie, ou Dictionnaire raisonne des sciences, des arts et des metiers」

初版:全35巻
本巻7巻(V.1-7) Paris, 1751-1757.
本巻10巻(V.8-17) Neufchaster, 1765.
補遺4巻(V.18-21) Amsterdam, 1776-1777.
図版11巻(V.22-32) Paris, 1762-1772.
図版・続1巻(V.33) Paris, 1777.
索引2巻(V.34-35) Paris, 1780.


ディドロ・ダランベール

Diderot, Denis, 1713-1784
フランス:作家・思想家

d'Alenbert, Jean Le Rond, 1717-1783
フランス:作家・物理・哲学者