クレヴェリンガ氏旧蔵演劇史コレクション

内 容 劇作品を核に演劇史・演劇論に関する文献を幅広く集めており、演劇というジャンルにおいては他に類を見ない程まとまっている。
構 成 洋書  OPACへ
旧蔵者 クレヴェリンガ(オランダ)
収蔵年 1992 (平成3年度全国共同利用大型コレクション)
目録 なし

クレヴェリンガ氏旧蔵コレクションに寄せて

 クレヴェリンガ氏旧蔵演劇史コレクションは、オランダのコレクター Cleveringa 氏が長年にわたって収集したおよそ2500冊の演劇関係図書のコレクションである。 その核となっているのは2000冊を超える劇作だが、彼の興味の幅は非常に大きく、古くはギリシャ・ローマの古典劇から、20世紀まで、また西欧だけでなく、東欧やロシア、さらにはアジアやアフリカの作品までが含まれている。 いまでこそ、演劇研究の世界でもアジアやアフリカが注目を集め、一種のブームになっているが、一般にはあまり知られていなかった時期から、こうした地域の作品にも目を配り、収集していた彼の先見の明には驚かされる。
 このほかにも、世界各国の演劇の歴史、演技や演出、さらには劇場・舞台装置に関する研究書、演劇辞典などのレファレンス・ワークも充実している。 私たちが演劇を研究するといった場合、それは地域や時代、あるいは作家を限定して関わることが多い。 もちろん、そうした方法が誤りであるというつもりは毛頭ない。 しかし、ある特定の作家あるいは作品を研究する場合でも、少なくともその周辺の諸作品や別の作家と比較したり、相互の影響関係を考えたりすることも必要である。 さらにいえば、演劇の歴史全体を広く見渡し、そのなかで、それぞれの作家・作品がどのような位置にあるのかをあきらかにすることも不可欠である。
 また、演劇というジャンル全体の共通する問題を考慮し、その問題がどのように具体的な作品のなかに反映されているかを考えることも重要である。 こうしたことは、単に演劇に限らず、文学のあらゆるジャンルについて言えることであるが、詩や小説といったほかのジャンルに比べると、なぜか演劇に関するこの方面の文献が手薄な図書館が多い。 これまでは本学の図書館も、例外ではなかった。 しかし、大型コレクションとして、このクレヴェリンガ氏演劇史コレクションが所蔵されたことにより、事情は大きく変わった。 いまや私たちは、他に誇れるコレクションを手にしているといってよいだろう。
膨大な作品と資料を前にして、このうちいったいどれだけに目を通すことができるだろうかという思いにかられながらも、私としては研究におおいに利用させてもらうとともに、勉強をはなれて好きな作品をじっくり読ませてもらうつもりである。 せっかくの宝の山が手の届くところにあるのだから、できるだけ多くの方々にこのコレクションを利用してもらいたいものである。

(人文学部 : 山下興作)
[高知大学附属図書館報 「山桃」 No.33 (1996.10) より]