英米対話捷径

 『英米対話捷径』は、英語圏で実地に教育を受けた初の日本人ジョン万次郎(中濱万次郎)による、単体本としては本邦初の英会話入門書である。
 書名にある「捷径(しょうけい)」とは「近道」の意味で、語単位の直訳による英語本は本書が嚆矢である。

 発行年は、第五葉の内題に「彼ノ一千八百五十九年 即吾 安政六己未歳ニ當ル」とあることから安政六 (1859) 年である。
 この翌年早々には、年号が万延と改められ、この年に咸臨丸がアメリカに渡った。
 『英米対話捷径』は当初、勝海舟や福沢諭吉をはじめとする咸臨丸での渡航者のために著されたものとも考えられる。

 本書には内容がほとんど同じ設楽氏版と知彼堂蔵版の二つの版があるが、
 いずれかの版がより広範な利用者を対象として後に出版されたものと考えられ、当時としては大変なベストセラーであったことが伺える。

 本学所蔵のものは知彼堂蔵版である。

  英米対話捷径 (PDF)  (学内のみ)

         


主な参考文献:
荒木伊兵衛『日本英学書志』創元社 1931.
大阪女子大学附属図書館『大阪女子大学蔵 日本英学資料解題』大阪女子大学 1962.
高知西ロータリクラブ「英米對話捷径 解説」
中濱博「中濱万次郎 : 「アメリカ」を初めて伝えた日本人」冨山房インターナショナル 2005.